血の染み付いた手帳
しがない傭兵が偽りの島で過ごした日々の記録
![]() (11/09)
(10/18)
(07/16)
(06/15)
(06/15) |
|
07270348 | [PR] |
05210110 | Day02 -黒猫- |
-2-
「……猫?」
気配を感じて、ゆらりと立ち上がると、恭平の背後には一匹の黒猫が立っていた。
こんなところに、猫? 恭平の頭に疑問がもたげる。
少なくとも、このような遺跡に似つかわしい生き物ではない。
そう、猫という生き物は、もっと都会の雑踏の中に紛れているべきではないのか。
はたまた、野生種の猫なのだろうか。
なんにせよ、その瞳には知性が感じられる。
まったくもって、謎の猫だ。
「……」
猫は鳴きもせず、恭平を見上げている。
可愛げも何もあったものではない。
ただ、知性ある瞳で恭平を見据えている。
「……やるのか?」
その視線に宿った闘志を肌に感じて、恭平は問いかけた。
「……」
猫は何も応えない。
ただ、その尾をピンと張り詰めて、身体を身震いさせた。
その動作は、承諾とも思える。
猫は爪を出し、そろりそろりと恭平の周囲を回り始めた。
「覚悟はいいか?」
猫の動きを追いながら恭平。
ニヤリ 猫は頬を緩ませ、笑みを浮かべた。
「そうか……俺も、できてる」
恭平もまた、野性的な笑みを浮かべて、ナイフを引き抜いた。
一匹と一人は、薄闇の中で対峙する。
-3-
「「……」」
一匹と一人は無言のまま同時に動いた。
黒猫は跳躍し、爪で恭平の喉を狙う。
最初から大穴狙い。一撃で勝負を決めるつもりなのか。
しかし、瞬時にその動きを読み取ってみせた恭平に、その爪は届かなかった。
膝をまげ、大地に伏せた恭平の上を黒猫が通過する。
その腹部をナイフで切りつけた。
腹筋のねじれを利用して、黒猫はその動きをかわす。
いや、当たった。しかし、浅い。
シュタッ
着地した黒猫はつけられたばかりの傷口をその舌で舐め、応急手当の代わりとした。
その瞳が爛々と輝いている。
小さな一撃は、火に油を注ぐ結果となったらしい。
「……ッ」
猫は瞳をカッと見開いた。
それは、幻惑の瞳。
正面から視線を受けた恭平の意識が、瞬時の揺らぎをみせる。
かつてない経験だ。
血と油と鉄しか知らない傭兵に、それがいかなるものであるかなど想像もつくまい。
ただ、事実、恭平の動きが瞬間、妨げられた。
それしか、分からない。
その代価は、さらなる傷跡だ。
太ももを走る静脈を鋭利な爪に切り裂かれ、鮮血が流れた。
「ち……」
舌打ちをして恭平は、背中合わせに崩れ落ちる黒猫へと振り返った。
回避動作が間に合わないと悟った恭平が繰り出した一撃は、
やはり、黒猫の前足に傷を残していた。
深い。
黒猫の前足からは白い骨が覗いている。
神経を切断されたためか、黒猫は前足を引きずるようにして、恭平へと向き直った。
「……ッ」
後ろ足で跳躍。
負傷した前足に頼らず、黒猫は恭平に肉薄した。
ナイフを逆手に構え、恭平は黒猫を迎え撃つ。
一撃。
繰り出されたナイフは、黒猫の表皮を削った。
身を縮め、皮一枚で攻撃をかわした黒猫は、繰り出された左腕に爪をたてる。
引き戻された左腕に深く爪を立てぶらさがった黒猫は、まるで鉄棒のように恭平の腕を使い、くるりと宙返りした。
尾を天に向けて、さらに宙を舞いながら、黒猫は恭平の頬に引っかき傷を残した。
そのままの勢いで恭平の背を越し、肩口を蹴って距離をとる。
それは、安全な距離であるかのように思われた。
再び一匹と一人は背中合わせに向き合う形となる。
仕切りなおし。
先ほどの攻防を優位に終えたことから、黒猫が油断していたことは否めない。
「……急所ははずしてやる」
黒猫の着地と同時、恭平は後ろ向きに跳躍していた。
後ろ手に構えた短剣は、黒猫を捕らえている。
全力の跳躍と、重力に引かれた自由落下。
背中から地面に倒れこみながら、手にしたナイフを黒猫の後ろ足に突き立てた。
太ももを貫通したナイフは、黒猫の後ろ足を大地に縫い付ける。
倒れたままの勢いで、ナイフを支点に後転。
恭平は黒猫の眼前に着地した。
「まだ、やるか?」
鼻先に顔を突きつけて、恭平は問いかける。
「……」
返答は爪の一撃。
恭平の頬が二重に抉られ、顔が朱に染まる。
「いい、返事だ」
手刀を一閃。
それは正確に、黒猫の首筋を捉えていた。
一瞬の断絶が、黒猫の意識を奪う。
「……悪いな、猫。いい勝負だった……」
意識を失った黒猫の太ももを、ちぎった布できつくしばり止血する。
十分に血が止まったことを確認して、ナイフを引き抜いた。
肉を断つ感触がする。
この怪我ならば、命に別状はないだろう。
以前のように歩けるか、その見立ては五分といったところだが。
「……?」
黒猫の足などへ無造作に手当てしていた恭平の視線が不思議なものを映した。
最初に与えた傷跡がすでにかさぶたへと変容している。
戦いの最中にここまで治癒したのだとすれば、驚異的な回復力だ。
そして、恭平自身、すでに血を流していないことに気づく。
これは、いったいなんなのだろうか。
遺跡の中に入ってからというもの、さまざまな違和感を感じていたが、これにも関係があるのだろうか。
考えてみるが、答えを知ることはできない。
だが、これならば黒猫もまた、以前と同じよう元気となるだろう。
「また、な」
自身にも手早く簡潔な手当てを済ませ、恭平はその場を後にした。
任務は続いている。早く、先に進まねばならない。
「……猫?」
気配を感じて、ゆらりと立ち上がると、恭平の背後には一匹の黒猫が立っていた。
こんなところに、猫? 恭平の頭に疑問がもたげる。
少なくとも、このような遺跡に似つかわしい生き物ではない。
そう、猫という生き物は、もっと都会の雑踏の中に紛れているべきではないのか。
はたまた、野生種の猫なのだろうか。
なんにせよ、その瞳には知性が感じられる。
まったくもって、謎の猫だ。
「……」
猫は鳴きもせず、恭平を見上げている。
可愛げも何もあったものではない。
ただ、知性ある瞳で恭平を見据えている。
「……やるのか?」
その視線に宿った闘志を肌に感じて、恭平は問いかけた。
「……」
猫は何も応えない。
ただ、その尾をピンと張り詰めて、身体を身震いさせた。
その動作は、承諾とも思える。
猫は爪を出し、そろりそろりと恭平の周囲を回り始めた。
「覚悟はいいか?」
猫の動きを追いながら恭平。
ニヤリ 猫は頬を緩ませ、笑みを浮かべた。
「そうか……俺も、できてる」
恭平もまた、野性的な笑みを浮かべて、ナイフを引き抜いた。
一匹と一人は、薄闇の中で対峙する。
-3-
「「……」」
一匹と一人は無言のまま同時に動いた。
黒猫は跳躍し、爪で恭平の喉を狙う。
最初から大穴狙い。一撃で勝負を決めるつもりなのか。
しかし、瞬時にその動きを読み取ってみせた恭平に、その爪は届かなかった。
膝をまげ、大地に伏せた恭平の上を黒猫が通過する。
その腹部をナイフで切りつけた。
腹筋のねじれを利用して、黒猫はその動きをかわす。
いや、当たった。しかし、浅い。
シュタッ
着地した黒猫はつけられたばかりの傷口をその舌で舐め、応急手当の代わりとした。
その瞳が爛々と輝いている。
小さな一撃は、火に油を注ぐ結果となったらしい。
「……ッ」
猫は瞳をカッと見開いた。
それは、幻惑の瞳。
正面から視線を受けた恭平の意識が、瞬時の揺らぎをみせる。
かつてない経験だ。
血と油と鉄しか知らない傭兵に、それがいかなるものであるかなど想像もつくまい。
ただ、事実、恭平の動きが瞬間、妨げられた。
それしか、分からない。
その代価は、さらなる傷跡だ。
太ももを走る静脈を鋭利な爪に切り裂かれ、鮮血が流れた。
「ち……」
舌打ちをして恭平は、背中合わせに崩れ落ちる黒猫へと振り返った。
回避動作が間に合わないと悟った恭平が繰り出した一撃は、
やはり、黒猫の前足に傷を残していた。
深い。
黒猫の前足からは白い骨が覗いている。
神経を切断されたためか、黒猫は前足を引きずるようにして、恭平へと向き直った。
「……ッ」
後ろ足で跳躍。
負傷した前足に頼らず、黒猫は恭平に肉薄した。
ナイフを逆手に構え、恭平は黒猫を迎え撃つ。
一撃。
繰り出されたナイフは、黒猫の表皮を削った。
身を縮め、皮一枚で攻撃をかわした黒猫は、繰り出された左腕に爪をたてる。
引き戻された左腕に深く爪を立てぶらさがった黒猫は、まるで鉄棒のように恭平の腕を使い、くるりと宙返りした。
尾を天に向けて、さらに宙を舞いながら、黒猫は恭平の頬に引っかき傷を残した。
そのままの勢いで恭平の背を越し、肩口を蹴って距離をとる。
それは、安全な距離であるかのように思われた。
再び一匹と一人は背中合わせに向き合う形となる。
仕切りなおし。
先ほどの攻防を優位に終えたことから、黒猫が油断していたことは否めない。
「……急所ははずしてやる」
黒猫の着地と同時、恭平は後ろ向きに跳躍していた。
後ろ手に構えた短剣は、黒猫を捕らえている。
全力の跳躍と、重力に引かれた自由落下。
背中から地面に倒れこみながら、手にしたナイフを黒猫の後ろ足に突き立てた。
太ももを貫通したナイフは、黒猫の後ろ足を大地に縫い付ける。
倒れたままの勢いで、ナイフを支点に後転。
恭平は黒猫の眼前に着地した。
「まだ、やるか?」
鼻先に顔を突きつけて、恭平は問いかける。
「……」
返答は爪の一撃。
恭平の頬が二重に抉られ、顔が朱に染まる。
「いい、返事だ」
手刀を一閃。
それは正確に、黒猫の首筋を捉えていた。
一瞬の断絶が、黒猫の意識を奪う。
「……悪いな、猫。いい勝負だった……」
意識を失った黒猫の太ももを、ちぎった布できつくしばり止血する。
十分に血が止まったことを確認して、ナイフを引き抜いた。
肉を断つ感触がする。
この怪我ならば、命に別状はないだろう。
以前のように歩けるか、その見立ては五分といったところだが。
「……?」
黒猫の足などへ無造作に手当てしていた恭平の視線が不思議なものを映した。
最初に与えた傷跡がすでにかさぶたへと変容している。
戦いの最中にここまで治癒したのだとすれば、驚異的な回復力だ。
そして、恭平自身、すでに血を流していないことに気づく。
これは、いったいなんなのだろうか。
遺跡の中に入ってからというもの、さまざまな違和感を感じていたが、これにも関係があるのだろうか。
考えてみるが、答えを知ることはできない。
だが、これならば黒猫もまた、以前と同じよう元気となるだろう。
「また、な」
自身にも手早く簡潔な手当てを済ませ、恭平はその場を後にした。
任務は続いている。早く、先に進まねばならない。
PR
05152124 | Day02 -遺跡- |
-0-
昨日と同じ道を辿って、魔方陣のある大広間まで降りてきた。
そこには二つの魔方陣があり、恭平と同じように島へとやってきた冒険者で溢れていた。
一人のもの、三人でチームを組むもの、それ以上の大多数で行動を共にするものなど、
それぞれが思い思いに話し合い、どちらの魔方陣から進むかを決めている。
階段の途中で、壁にもたれかかるようにしながら、
恭平はその光景を眺めていた。
どうせ探索をするのならば、人は少ない方がやりやすい。
各冒険者たちがどのような道を選択するかを見届けてから遺跡へと侵入するつもりだった。
早いものはやって来てすぐに、
遅いものでも小一時間ほどたっぷりと時間をかけて、
行く先を決めた者たちは遺跡の中へと歩みいる。
「そろそろ、俺も行くか…」
ひとりごちて、恭平は荷を背負った。
たいして大きくないバックパックの中には、探索中の食料などが詰め込まれている。
一度潜れば、しばらく日の目を浴びることはできないだろう。
寝坊をしてしまったのか、大慌てで魔方陣に飛び込む少女を見送って、
恭平は魔方陣に足を踏み入れた。
体が不思議な浮遊感にとらわれ、恭平の意識は薄らいで途切れた。
-1-
一瞬の断絶の後、意識を取り戻すと、先ほどとは別の大広間に恭平は立っていた。
頭がズキズキと痛む。どうも、魔方陣を使用しての移動とは相性が良くないらしい。
薄闇に慣れてきた目で周囲を見渡すと、
先ほど見送った幾人かの冒険者が、次の行き先を決めかねてか方々で足踏みをしていた。
恭平もまた、様子見を決め込んで、広間の片隅に腰をおろす。
これからの日々は長い、慎重になりすぎるということはないだろう。
依頼は果たす。
だが、それ以上に生き残ることこそが大切なのだ。
そのとき、
腰を下ろして、荷物の整備を行おうとしていた恭平の後ろに何者かの気配が生じた。
獣の臭いがする――。
昨日と同じ道を辿って、魔方陣のある大広間まで降りてきた。
そこには二つの魔方陣があり、恭平と同じように島へとやってきた冒険者で溢れていた。
一人のもの、三人でチームを組むもの、それ以上の大多数で行動を共にするものなど、
それぞれが思い思いに話し合い、どちらの魔方陣から進むかを決めている。
階段の途中で、壁にもたれかかるようにしながら、
恭平はその光景を眺めていた。
どうせ探索をするのならば、人は少ない方がやりやすい。
各冒険者たちがどのような道を選択するかを見届けてから遺跡へと侵入するつもりだった。
早いものはやって来てすぐに、
遅いものでも小一時間ほどたっぷりと時間をかけて、
行く先を決めた者たちは遺跡の中へと歩みいる。
「そろそろ、俺も行くか…」
ひとりごちて、恭平は荷を背負った。
たいして大きくないバックパックの中には、探索中の食料などが詰め込まれている。
一度潜れば、しばらく日の目を浴びることはできないだろう。
寝坊をしてしまったのか、大慌てで魔方陣に飛び込む少女を見送って、
恭平は魔方陣に足を踏み入れた。
体が不思議な浮遊感にとらわれ、恭平の意識は薄らいで途切れた。
-1-
一瞬の断絶の後、意識を取り戻すと、先ほどとは別の大広間に恭平は立っていた。
頭がズキズキと痛む。どうも、魔方陣を使用しての移動とは相性が良くないらしい。
薄闇に慣れてきた目で周囲を見渡すと、
先ほど見送った幾人かの冒険者が、次の行き先を決めかねてか方々で足踏みをしていた。
恭平もまた、様子見を決め込んで、広間の片隅に腰をおろす。
これからの日々は長い、慎重になりすぎるということはないだろう。
依頼は果たす。
だが、それ以上に生き残ることこそが大切なのだ。
そのとき、
腰を下ろして、荷物の整備を行おうとしていた恭平の後ろに何者かの気配が生じた。
獣の臭いがする――。
05080012 | Day01 -拠点- |
太陽が中天に差し掛かるころ、舟が港に着いた。
さしたる確認もなく、久方ぶりの陸地へとあがる。
どうやら、文化レベルはさほど高くないらしい。
潮の臭い漂う漁港と市場を通り抜けて、
小高い丘へと続く裏通りに、それはあった。
年代を感じさせる、古びた一軒家。
だがしかし、前の持ち主によるのだろうか、手入れは行き届いている。
今回の依頼者からあてがわれた、
滞在中の拠点となる場所だ。
一階と二階とが独立した部屋になっているらしい。
どちらかを寝室にして、片方を物置にすることにしよう。
一階の扉を開くと、取り付けられたベルが済んだ音をたてた。
うっすらと埃の積もった室内は、それさえ除けば小奇麗といっていいだろう。
前の持ち主が残していったものか、女性趣味的なアンティーク家具が並んでいる。
カウンター奥のキッチンは、俺一人には広すぎるぐらいだ。
そもそも俺は料理ができない。宝の持ち腐れというやつだ。
どことなく可愛らしい部屋に、男が一人。
不思議と母親のことを思い出す。
そういえば、彼女がこういった家具や装飾を好んでいたような気がする。
まあいい、どんな部屋であろうと。
寝れさえすれば仕事はこなせるのだから。
むしろ、屋根があるだけでもありがたいぐらいだ。
埃臭い部屋もそれはそれで御免だけれど。
どのみち今日はもう動けない。
窓を開けて、部屋の片づけを行うこととしよう。
遺跡の探索は、明日から始めればいい――。
さしたる確認もなく、久方ぶりの陸地へとあがる。
どうやら、文化レベルはさほど高くないらしい。
潮の臭い漂う漁港と市場を通り抜けて、
小高い丘へと続く裏通りに、それはあった。
年代を感じさせる、古びた一軒家。
だがしかし、前の持ち主によるのだろうか、手入れは行き届いている。
今回の依頼者からあてがわれた、
滞在中の拠点となる場所だ。
一階と二階とが独立した部屋になっているらしい。
どちらかを寝室にして、片方を物置にすることにしよう。
一階の扉を開くと、取り付けられたベルが済んだ音をたてた。
うっすらと埃の積もった室内は、それさえ除けば小奇麗といっていいだろう。
前の持ち主が残していったものか、女性趣味的なアンティーク家具が並んでいる。
カウンター奥のキッチンは、俺一人には広すぎるぐらいだ。
そもそも俺は料理ができない。宝の持ち腐れというやつだ。
どことなく可愛らしい部屋に、男が一人。
不思議と母親のことを思い出す。
そういえば、彼女がこういった家具や装飾を好んでいたような気がする。
まあいい、どんな部屋であろうと。
寝れさえすれば仕事はこなせるのだから。
むしろ、屋根があるだけでもありがたいぐらいだ。
埃臭い部屋もそれはそれで御免だけれど。
どのみち今日はもう動けない。
窓を開けて、部屋の片づけを行うこととしよう。
遺跡の探索は、明日から始めればいい――。
05020217 | Day00 -揺れる舟- |
新しい任務が届いたのは、一週間程前のことだった。
湿気と飛び交う虫が最大の敵だった密林の奥地から、
今はこうやって海の上、頼りない小船に揺られている。
次の戦場は、海に隣接した山岳地帯。
依頼主は現政府に反抗している共和派のゲリラ……。
その主義主張など知ったことではない。
傭兵は対価さえ貰えるなら悪魔の味方だとてする。
それが仕事だからだ。
虚しさを覚えることには、もう、飽きた。
仕事から逸脱しない範疇で、俺は、俺の戦いをするだけだ。
墨を流したかのような海。
その鏡面に反射して、星空が瞬いている。
まるで宇宙に彷徨いこんでしまったかのようだ。
それにしても――。
この通達とともに送られてきた、案内状。
これはいったいどういう意味なのか。
「島 遺跡 退屈をしている諸君」
記されているキーワードは通達からかけ離れている。
同じ封筒に入っていたが、まったく共通点が見出せない。
これも、現地につけば分かるのだろうか。
夜はなおも深い。
今日は眠ることにしよう。
湿気と飛び交う虫が最大の敵だった密林の奥地から、
今はこうやって海の上、頼りない小船に揺られている。
次の戦場は、海に隣接した山岳地帯。
依頼主は現政府に反抗している共和派のゲリラ……。
その主義主張など知ったことではない。
傭兵は対価さえ貰えるなら悪魔の味方だとてする。
それが仕事だからだ。
虚しさを覚えることには、もう、飽きた。
仕事から逸脱しない範疇で、俺は、俺の戦いをするだけだ。
墨を流したかのような海。
その鏡面に反射して、星空が瞬いている。
まるで宇宙に彷徨いこんでしまったかのようだ。
それにしても――。
この通達とともに送られてきた、案内状。
これはいったいどういう意味なのか。
「島 遺跡 退屈をしている諸君」
記されているキーワードは通達からかけ離れている。
同じ封筒に入っていたが、まったく共通点が見出せない。
これも、現地につけば分かるのだろうか。
夜はなおも深い。
今日は眠ることにしよう。