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血の染み付いた手帳

しがない傭兵が偽りの島で過ごした日々の記録
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  • :04/25/18:10

03012343 15日を過ごして16日

私が島に来て、16日が過ぎた。
日を数えてみると、ほんの短い間に思えるけれど、まるで数ヶ月を過ごしたかのよう。

本当に遠くまで来たものと思う。

久しぶりに戻った自分の部屋は、うっすらと埃が積もっていた。
そのうえに幾人かの足跡が残されている。

留守の間に来客があったのかしら?

無用心と思われるかも知れないけれど、私は部屋に鍵をかけていない。
島の通りの片隅に借りたこの家は、エプロン愛好会のアトリエとしても解放している。

部屋に置いてあるものは、料理の道具や下着類など、生活に最低限必要なものだけ。
泥棒の心配をする必要はない。

冒険者の暮らしとはそういうものだ。
思えば昔から、鍵のかかる建物で生活をしたことなんてなかったかもしれない。

荷物を抱えて、部屋の中へと踏み入る。
と、机の上に残された、幾枚かの書置きを発見した。

荷物を足元にそっと下ろして、書置きを手にする。

それは、先日送ったチョコレートのお礼や、
エプロン愛好会に参加している乙女たちからのメッセージだったり。

ついつい クスクス と笑みがこぼれた。

人との関わりを愛するようになったのはいつからだろう。
日本という極東の島国で、彼女と出会ってからだろうか。

それらのメモ書きを買ったばかりのメモ帳に挟んで、旅荷物の底に押し込めた。
久々の帰宅だが、のんびりしてばかりもいられない。

次回の探索に向けて、買い物はもう済ませてある。
元気の良い少年と厳しい老人の経営する商店は、満足のいく品を提供してくれた。

出立は今夜。それまでは自由な時間を与えられている。
流樹の間抜けが街に帰還したのは今朝方のことだけれど、それは自業自得よね。

また、しばらくは留守にするのだから、少しは部屋を綺麗にしておいてあげなくちゃ。
それに、いつまでもこのアトリエが無名というのも可哀想。

私はそれを荷物から探し出して、再び部屋の外へと戻った。

『Para To Amor』 ―― 全てはあなたの愛の為に。

そう記された看板を部屋の入り口に掲げる。
それだけのことで、なんだか部屋がより自分に近づいたように感じられる。

これからもよろしくね。

看板を見上げて、そう声をかけた。

これで一人だけの命名式は終わり。
さあ、掃除を始めよう。

掃除が終わったら、新しくオープンしたという冒険者の酒場を訪れるのも悪くはない。

私は部屋の窓を大きく開け放つ。

春を間近に感じさせる風が、部屋を爽やかな梅の香りで満たした。
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