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血の染み付いた手帳

しがない傭兵が偽りの島で過ごした日々の記録
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  • :04/25/18:59

03110432 17日目 階段上練習試合 前編

石段上の戦い 前編
□登場人物

≪ドキドキ・クッキング≫
□キョウ子――旅の乙女。短剣と一体化したフィストグローブを武器に戦う。
□プリムラ――錬金術師の兄をもつ少女。斧を軽々と振るう怪力の持ち主。
□モッカヴィル――巨大蟻の貴族。キョウ子を思慕し、忠誠を誓っている。
□巨大蟻――モッカヴィルとは別種の巨大蟻。

≪TC三番隊・チェインパンサー≫
■フォウト――ストイックな女性の元傭兵。
■エゼ――ハーフエルフの好青年。弓の腕は一級品。
■ナミサ――青髪の魔術師。常に冷静な切れ者。


   0


 乾いた風が大地に敷き詰められた白砂を巻きあげた。
 壁面に地上へと繋がる亀裂がはしっているのだろう。中空に吹きあがった砂粒に、差し込む陽が反射して幻想的な輝きを放った。
 そしてそのまま、煌めきは風に吹かれて散り散りに消えていく。

 真紅の獣を従えた少年を打ち倒した冒険者たちが目の当たりにしたのは、砂の滝が降りそそぐ回廊だった。
 静謐な空気を湛えた回廊は、昼には穏やかな陽が差し込み、まるで柱のようにも見える流砂の滝が照らしだされる。
 逆に、夜ともなれば、回廊は完全な闇に閉ざされ、砂の流れる音だけが木霊し耳を打った。

 訪れたものは思うだろう『砂の神殿』と。

 しかし、そんな神秘的な印象とは裏腹に、そこは巨大な生物の闊歩する危険な地でもあった。

 今、その最奥の壁面に穿たれた穴を覗き込んでいるのは、そんな死地を潜り抜けてきた冒険者たちである。
 影は四つ。そのうち二つは、人間のものではない。

 人間のものは、キョウ子と、プリムラの二人であった。
 
 残る二つの影。
 これはキョウ子に従うモッカヴィルと、プリムラの連れた巨大蟻のものである。

 その二人と二匹が、壁面の穴を覗き込んでいた。
 否、正確には、その奥深くと続く石造りの階段を、である。

 崩れた壁面の奥に覗くのは、遙か深淵へと続く巨大な階段であった。
 その幅は大人が数十人も並んで下りれるほどにあり、続く先は闇にのまれており見ることができない。
 それほどまでに階段が続く先は、深い。

 再び吹きつけた風が、砂を舞い上げキョウ子はその逞しい片腕で目を覆った。

 乾いた風は階段の奥底から吹きあげている。
 つまり、先が何処かへと続いている証拠である。

「キョウ子さん……行くの?」

 プリムラが隣に立つキョウ子を見上げて、そう問いかけた。
 表情に乏しいその顔が、いつになく緊張に強張ってみえる。

「うぅん、ここまで来て、引き返すのもねぇ……。
 ちょっと、下を覗いてみるぐらいなら大丈夫じゃないかしら?」

 髪についた砂を払いのけながら、キョウ子は答えた。
 いまだ吹き続ける風に目を細めながらも、その目は階段の深奥を捉えて離さない。

 その目の奥底に輝くものがあった。
 それを言葉で言い表すならば『好奇心』と言い換えるのが正しいだろうか。

「行きましょう♪」

 微笑んで、崩れた壁の残骸へと足を進めた。
 それに付き添うようにして、モッカヴィルが後へと続く。

 既に方々では地下二階へと繋がっている階段が発見されていると伝え聞く。
 この階段もその一つなのであろう。

 それと同時に聞いている、噂があった。
 地下二階に住むのは動物ではない、魔物である、と。

 果たして自分の力で太刀打ちすることができるのだろうか。

 そんな思いに逡巡しながらも、プリムラは大地を蹴った。
 瓦礫を踏み越え、階段へと続く道の途中で彼女を待つ大柄な乙女のもとへと。



   1


 永きにわたり、忘れ去られていた石造りの階段は、砂に埋もれていた。
 その上に幾つもの足跡が刻まれている。

 先を行く冒険者のものであろう。
 キョウ子たち以外にもその道へ踏み入れた冒険者の数は多い。

 島へと訪れて17日、中にはキョウ子たちの顔見知りと呼んでいい者もあった。

 それらの足跡が残されている。

 キョウ子たちにとって、ある意味ではそれは望ましいことであった。
 永い時の中で、石の階段は風化し脆くなっている。
 また、砂に埋もれた箇所も問題で、細やかな白砂は非常に滑りやすかった。

 先を行く者の中にも足をとられた人間がいるのであろう。
 そういった地点には慎重な足跡が刻まれ、その後を行くことで事前に危険を回避することができる。

 たったそれだけのことでも、進む速度は変わるのだ。

 階段が切れ落ちた箇所など、危険な場面もあったが、危なげなく階段を進んでいく。

 半時は歩き尽くめである。

「まだ、続くのかしらぁ?」

 既に来た道の先は見えない。
 それだけでも、どれ程の行程を進んできたのかが分かるだろう。

 さらに言えば、その階段は僅かに湾曲して造られているらしい。
 これでは、先が見えないというのも頷ける。

 キョウ子を除けば、さほど口の滑らかな者はいない。
 会話もなく一行は階段を進む。

「……あっ」

 事件はそれからさらに半時がたち、下り始めてから丁度一時間を数えた頃に起きた。

 プリムラが踏んだ足場が崩れたのだ。
 風化した足場は脆く、少女とその提げた大斧の重量を支えきれなかった。

 崩れ落ちる石段とともに、プリムラの上体が傾ぐ。

「プリムラちゃん!」

 異変を察したキョウ子が、プリムラを掴み止めようとその腕を伸ばした。

 冒険者たる者、このような非常時も咄嗟に行動を取れなくてはならない。
 思い通りになる行程などありえないからだ。

 しかし、この時ばかりは場所が悪かった。
 崩壊は波状的に広がり、プリムラへ近づくことがままならない。

 下手をすると、キョウ子もプリムラの二の舞である。

「キョウ子さんっ……」

 キョウ子の伸ばした手が、あと一歩というところで空を切った。

 バランスを取ろうと支えた脚が、身体を支えきれずに前傾する。
 プリムラの身体は宙へと投げ出され、それから重力を思い出したかのように落下を始めた。

 その行き着く先は、どこまで続くか判然としない階段だ。
 このままでは叩きつけられた勢いそのまま、遙か階下まで転げ落ちてしまうだろう。

 とてもではないが、軽い怪我ではすまない。

 先に起こる事態を、頭ではなく感覚で認識し、キョウ子から血の気が引いた。

 そこへ――。

「危ない!」

 階下から雷光の如き動きで、駆け上がる青年の姿があった。

 抱えていた巨大な洋弓を投げ捨て、落下地点に先回りしプリムラを抱きうける。
 プリムラだけならば軽いものだが、それに斧が加わりかなりの重量であっただろう。しかしバランスを崩しさえしない。

 痩せて見えるが、かなり恵まれた体躯の持ち主なのだろう。
 揺るぎなく抱え、危機を脱した少女に微笑んでみせる。

「危ないところでしたね。お怪我は、ありませんか?」

 石壁から放たれる光鉱石の明かりしかないが、実に爽やかな青年だ。

「……あ、あの」

 その腕の中で、プリムラが俯いている。

「どうしました? どこか痛みますか?」

 青年はどこまでも心配そうに、少女を覗き込んだ。
 危機を脱したばかりで、恐怖に怯えているのだと思ったのだ。

 ここにいる以上は冒険者なのだろう。それも腕の立つ部類だ。
 しかし、見た目は少女である。その感性は歳相応に違いあるまい。

 青年のその判断は、確かに的外れではなかった。

 次いでその少女から放たれた言葉は、

「……あたってます」

 だったのだ。

 お姫様のように抱きかかえられたプリムラの右胸に、青年の手のひらが触れていた。

「な、な、ななななななな!!!!」

 美形が崩れた。

 少女を石畳に降ろすと、慌てて距離をおく。

「ち、違うんですよ! いえ、違わないんですが! いや、そうではなくて!」

 しどろもどろ。思考は迷走し、紡がれる言葉は意味を成さない。

「プリムラちゃん!! 大丈夫ぅ!?」

 エゼが必死に弁解しようとしているところへ、キョウ子が蟻二体を連れて降りてきた。
 その表情は焦燥に駆られている。よほど、プリムラのことを心配していたのだろう。

 青年の傍らで俯いているものの元気そうなプリムラを視界に捉え、その顔が綻ぶ。

「良かった、無事だったのねぇ!! まぁ――エゼさん!!」

 次いで、青年――以前、防具の作成を依頼した――エゼを認識して、声をあげた。

 キョウ子が身につけている黒宝石製のエプロンが、エゼの手になるものだ。
 綿密に織り込まれた鉱糸は抜群の強度を発揮し、幾度となくキョウ子を守っている。

 その作り手であるエゼが、いま、プリムラを助けていた。

「なんとお礼を言っていいか――」

「キョウ子さん! 本当に違うんです! 不可抗力なんですよ!」

 安堵し、感謝の表情を浮かべるキョウ子に、慌ててエゼが弁解した。

 その横で、プリムラはもじもじと俯いている。

「えっと……どういうことかしら?」

 その二人のただならぬ様子に、キョウ子はただただ首を傾げていた。

 プリムラが無事で、本当に良かった。そう思いながら。


   2


「遅い……」

 階段を半分も下ると、そこに踊り場がある。
 踊り場と一口に言っても、階段の規模が規模である。広さは大部屋ほどもあり、その造りはしっかりとしたものだ。

 ここを過ぎると、階下から明かりが差し、地下二階が近いと知れる。

 荷物を降ろし休んでいたその女傭兵は、踊り場の一端に立ち腕を組んで階上を見上げていた。

 銀髪をアシンメトリーに伸ばし、そこだけを束ねるという変わった髪型をしている。
 発した言葉は硬いが、刺々しいものではない。

「エゼさんのことだから、大丈夫ですよ」

 その後方から、これは崩れた石柱に腰掛けた青髪の男が静かな声で言った。

 銀髪の女の名は、フォーマルハウト・S・レギオン。
 青髪の男の名は、ナミサ=クィンテット。

 偽りの島へ訪れた冒険者の数は多い。
 その中には様々な経歴、様々な考え方の者たちがいた。

 一人で戦うことをよしとするもの、ともに島へと訪れた仲間と旅を共にするもの、旧知の者と組む者。
 そして、見ず知らずながらも、大人数でチームを組むことを考えた者だ。

 数ある才能を集めることで、容易ならざる遺跡の探索を推し進めようとしたのである。

 その最たる一つに『Triad Chain』という部隊があった。

 二人はその三番隊『チェインパンサー』に所属する冒険者である。

 最後の一人――エゼは、気になることがあると、階上へ戻ったまま戻ってこない。
 年頃の青年だ。一人になりたいこともあるだろう。

 フォウトなどは、そんなエゼのことを「もう少し、用心して欲しい」と思うこともあるのだが、エゼはやはり所用などで隊列を離れることがある。

 彼が何をしているのかは知らない。

「やはり、迎えに行きましょう」

 フォウトは思案顔で、ナミサに進言した。

 信用していないわけではない。
 しかし、この先はさらなる危険地帯、バラバラになることは避けなければならない。

「フォウトさーん、ナミサさーん」

 そこへ、問題とされていた本人が還ってきた。

 エゼ=クロフィールド。エルフの母と人間の父をもつハーフエルフの少年と青年の狭間にある若者だ。
 微笑を浮かべて、二人に向かって手を振っている。

 フォウトの思案などどこ吹く風といった様相で、段を飛ばし気味に軽やかな足取りで踊り場へと下りてきた。

 一人振り回された形になるフォウトは、額にシワを寄せている。

「…………。エゼ君、約束は15分だったはずですが?」

 溜息を吐き、腰に手を当てながら、詰問口調でエゼを迎え入れた。

 やはり座ったままで、触らぬ神に祟り無しと、そうそうにナミサは傍観を決め込む。
 エゼがどのような反応を示すのか、興味深そうに眺めていた。

「す、すみません……。」

 フォウトと対面してエゼは口を開きかけたが、その表情を見て取り口を噤んだ。
 笑みを消し、エルフの遺伝子が濃く表れた耳を萎れさせて、謝罪の言葉とともに頭を下げる。

 いつもの事なのか、フォウトも深く追求するつもりはなさそうだ。
 エゼが自発的に話し始めるのを待っているのかもしれない。

「実は、思いがけない人に会いまして……。」

 内心、安堵の息を吐きながら、エゼは階上を指差した。


   3


 階段は階下からの明かりに照らし出されている。
 ひび割れた壁面、風化した石畳、階上では散見された白砂は姿を消し、ところどころに岩が露出している。

 この辺りは、地層の上に直接石段を築いたのだろう。
 流れる風に、土の臭いが混ざっている。

「そうですか、そんなことが。」

 その上を並んで歩きながら、キョウ子の説明を聞いて、フォウトは頷いた。
 危機にあった知人を救ったのだ、エゼのその行いは褒められこそすれ、叱るような内容ではない。

 もっとも、その置かれた状況にもよるのだが。

 傭兵はチームだ。最も重要なのは己の命、そしてチームの命。最後に、味方の命。
 戦場でいちいち周りを助けていたのでは、自分の命さえも覚束ない。

 それはともあれ、今回の話を聞く限りではエゼの行いは正しかっただろう。

「……。」

 エゼに救われたプリムラは、一行の最後尾を巨大蟻とともに歩いている。

 無言で歩く姿は、常と変わらない。
 が、その俯きがちな視線は、チラチラと前方を歩くエゼに送られていた。

 気付いていないのは、当のエゼだけだろう。

 キョウ子などは、フォウト達と合流するために、三人で階段を下りている最中から気付いている。

「エゼさん。本当に、ありがとうねぇ♪」

 不思議に思いながら、キョウ子は振り返り、エゼに微笑を送る。

 エゼがその場にいたのは、幸運な偶然だった。
 いなければ、プリムラは大怪我をしていた可能性が高い。

 エゼが居合わせた、そのことに、感謝の念は尽きない。

「あ、い、いいえ。当たり前のことをしたまでですから」

 何故か歯切れ悪く応じ、エゼは「あはは」と笑ってしきりに頭を掻いている。

 どうも、その時の話となると妙な様子であった。

「なんだか、妙ねぇ……。ところで、フォウトさん。そろそろ休憩しません?」

「休憩? まだ、出発して半時ですが……」

 B1階から踊り場までの行程でいえばその半分ほどを、踊り場を出発してから踏破していた。

 慣れもあるだろう。
 だがその最大の要因は、下るほどに道幅が広がり、歩きやすさを増していることだ。

「だけれど、プリムラちゃんとエゼさんがあの様子だし……。ナミサさんも疲れてるみたい」

 プリムラもエゼも、キョウ子――そしてフォウト――の目には、普段に比べてどこか呆けているように見える。

 そしてナミサは、単純な体力の不足からか足取りが重い。

「……そうですね。一度、ここで小休止をとりましょう」

 思案顔で頷いたフォウトに、キョウ子は微笑み返す。
 それから振り返って、後続の三人に告げた。

「お疲れさまぁ! ちょっと、ここで休憩をとるわよぉ♪」



   ~閑話休題~



 練習試合で戦った、フォウトさんが素敵過ぎたので、それを書き起こしてみたいと思いチャレンジすることと相成りました。
 練習試合が書きたかったのに、前振りが長すぎてまだ戦っていません。看板に嘘偽りあり。ごめんなさいorz

 メッセージ解析を参考に、フォウトさんたちの口調や、PT内でのやり取りを閲覧。
 エゼさんがどんな方か良く分かりました!!

 レンタル日記にもチャレンジしているものの、皆さんの魅力を引き出せているか。
 むしろ失礼になっていないかが、毎回ドキドキものです。

 けれど、これからもチャレンジして行きたいと思います。
 後編ではフォウトさんの躍動的な動き、エゼさんのムッツリを表現できれば良いなと思いつつ。

 思い浮かべる遺跡像には差があると思いますので、強引に自己流に捻じ曲げて思い浮かべていただけると幸いです。

 本家の日記が未だなので、筆を置くことといたします。
 続きは近日中に書き上げる予定。

 最後に――途中に? フォウトさん、ナミサさん、エゼさんに、感謝を。
 レンタル宣言に入っていたようなので安心してお借りします。

 お三方の本当に痺れるぐらい格好いいところは此処からだと思うので、
 精一杯それを表現できるよう尽力いたします。

 フォントとブログの設定上読みづらくてすみませんorz
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